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2-24 怒涛のパーティー 2

last update Última atualização: 2025-10-14 20:48:36
エレベーターを降りた沙月は緊張の面持ちでパーティー会場にやってきた。

中へ足を踏み入れると、大勢の客がひしめき合っていた。

余程豪華なパーティーなのだろう。参加客の中には沙月が良く知る著名人たちの姿もある。

(あの人は……海外を飛び回る有名なルポライターだわ。あそこにいるのは有名な女優ね)

周囲を見渡していると、突然壇上から司会者の声がスピーカーを通して会場内に響き渡る

「本日は、朝暮澪アナウンサーの復帰を祝うレセプションにお越しいただき、誠にありがとうございます。彼女の新たな門出を、拍手で迎えましょう!」

司会者の言葉で会場内に拍手が響き渡る。

沙月は無言でパーティー会場の中心へ向かって進み……周囲でざわめきが起こる。

「え? あれって……」

テレビ局の女性社員たちが沙月に気付き、グラスを持ったまま動きを止める。

「沙月さん? そんな……」

「存在感が薄いと思っていたのに……」

一人がぽつりと呟くと、隣の女性が悔しげに唇を噛んだ。

「悔しいけど……似合ってるわね」

「ふ、ふん! あ、あれくらい……な、何よ……!」

けれど、周囲の男性たちはすでに沙月に視線を奪われていた。

「何て美しい人なんだろう……」

「芸能人か?」

「変な話、朝暮澪より美人じゃないか?」

その声は小さかったが、徐々に波紋が広がり始めていた。

男性たちの視線や、女性たちのざわめきを気にかけることも無く壇上を見つめる沙月。

背筋を伸ばしたその姿は、誰よりも人目を惹いていた。

(私はもう逃げない。誰かに怯えることも屈することもしない。自分の為に……ここにいるのだから……!)

今、壇上では澪と司の姿がある。

笑顔で周囲を見渡している澪は白のドレスに身を包んでいた。それはまるでウェディングドレス姿のようにも見える

一方の司は黒のスーツに身を包み、司会者の話を聞いている。

すると舞台に立つ天野司と澪も、周囲の視線とともに眩しい沙月の姿に気づき、二人の目は複雑な色を帯びた。

沙月の姿を目にした澪は、思わず息を呑み、目を見開いた。

その瞳には驚きが浮かんでいたが、すぐに微かな怒りが滲み始める。

沙月の存在感に威圧されそうになる澪だったが、次の瞬間。強い意志が澪の瞳に宿る。

(司は絶対に私のものよ……沙月、あんたになんか絶対に譲ってやるものですか!)

澪の視線は、まるで宣戦布告するかのように沙月へと向けられる。

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  • 冷酷御曹司は逃げた妻を愛してやまない   2-28 白石家の影 1

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